「弦セレ」界の幕内事情〜チャイコフスキー、ドヴォルザーク、そしてエルガー〜

弦楽四重奏
「弦楽セレナーデ」と聞いたとき、まずどの曲を思い浮かべますか?

おそらくここ日本では、とあるCMのおかげもあり、チャイコフスキーの弦楽セレナーデが抜群に有名です。

そう、これです。「弦楽セレナーデ」だと知らずとも、反射的に仕事で出くわした嫌なワンシーンを思い出す仕様の曲です。チャイコフスキーいい迷惑だよ本当にw

いきなりクライマックスなこの曲。初めて聴いた時に本当にオー人事から曲が始まって衝撃を受けましたw

ちなみにテレビを見ないので全然知らなかったのですが、例のCM復活したそうですね。

https://withnews.jp/article/f0180214002qq000000000000000W00o10101qq000016805A

これを知らずにこんなこと書いていたなんて、なんという偶然。というかむしろオー人事が15年も放映されてなかったことに驚いた。どれだけ時代に取り残されているんだろうw

そして次に有名なのがドヴォルザークの弦楽セレナーデでしょう。いつも思うのですがDvořákの綴りのどこから「ザ」が生み出されるのか不思議でしょうがない。実際英語の発音ではドヴォラックになるらしいですし。そういえばキーボードでドヴォラック配列ってありますよね。この配列の開発者ってこのドヴォルザークの遠縁らしいですよ。

脱線しすぎですね、音源どうぞ。

おそらく偶然ですが、この2曲どちらも前奏なしでいきなり主題が出てきますね。

そもそもセレナーデって何よって話ですが、日本語に訳すと「夜曲」「小夜曲」などと呼ばれます。

https://ja.wikipedia.org/wiki/セレナーデ

上記のWikiでは、夜に演奏される、女性を褒め称える曲みたいなことが書いてありますね。

たいていは一人の歌い手が、携行可能な楽器(リュートやギターなど)を手ずから弾きつつ熱唱する、というパターンはある

ってもうそれ売れないギタリストじゃないですか、自作の曲を披露してドン引かれる。

そっか、聴いてもらえるうちに心を掴まなきゃいけないから最初から全開な曲が多いのか。

弦楽合奏という演奏形態、実はあまり馴染みがないかもしれません。読んで字のごとく弦楽器のみで構成された合奏体以上の何物でもないのですが、そんな人いっぱいいなくても弦楽四重奏(ヴァイオリン2本とヴィオラとチェロの4人のみ)でいいじゃんとなりがちで、レパートリーはそちらの方が圧倒的に多い。複数の弦楽器で奏でるワサワサ感が必要な時に、作曲家にこの編成が選ばれるのでしょう。

さて、今まで紹介した2曲が「弦楽セレナーデ」東西の横綱です。それは疑いのない事実ですが、自分は大関、または関脇クラスにあたるこの曲を推したくてここまでだらだら書いてきました。E.エルガー作曲の弦楽セレナーデです。

エルガーといえば有名なのは『威風堂々』ですね。

個人的にはあた○んちやCoo○ Doなんかが思い浮かびます。テレビって怖い。ちなみに有名なのは第一番で、第六番まであります。

この曲も例に洩れずツカみが素晴らしい。ヴィオラの動機に導かれて登場するヴァイオリン、波のように寄せて引くこの旋律は鳥肌ものですね。もうこの冒頭4小節がこの曲を聴く意味といってもいいのですが、まあ最後まで聴いてみましょう。

ちなみにこの曲をヴィオラ奏者に与えると恐らくほぼ必ず喜びます。特に第1楽章はヴィオラこそが音楽を動かすスイッチとして機能しています。普段ヴァイオリンとチェロに気を使いっぱなしな中間管理職なヴィオラが先陣を切って輝ける貴重な曲なのです。

第2楽章。静かに始まりますが、ドラマチックに盛り上がっていきます。個人的に惜しいなと思うのが全体の半分ぐらいがこの第2楽章ということ。ちょっとバランスが悪いような……。この曲はエルガーの初期作品で出世作なので、致し方ない部分もあるのかもしれません。偉そうに、鳩のくせに何様だよって感じですが。

イギリスはピューリタン革命などが影響して17世紀のバロック期からエルガー・ホルストが登場する19世紀後半まで音楽史的に大きな空白があると言われています。しかしなのか、だからなのかわかりませんが、近代のイギリス人作曲家たちによる曲は他国にはない独特の叙情性にあふれている、というか、雑にいうととってもイギリスっぽい要素を感じることが多いです。『威風堂々』ももちろんその代表例。この曲もそんな、とても誇り高いような、それでいて同時に田舎くさいような、独特なイギリスっぽさを感じます。

第3楽章は最初明るく牧歌的な表情ですが、にわかに雲行きが怪しくなったかと思うと(これも通り雨の多いイギリスっぽさでしょうか)第1楽章のテーマが戻ってきます。憎いね~三菱と言いたくなるところです。最後は少し光が差して終わります。

いい曲です。個人的には横綱たちよりも熱烈に応援しているのですが、規模やインパクトの面ででどうしても押し切られてしまうようです。というわけで「弦セレ」界の幕内事情でした。

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