ストームライダーとレトロフューチャー

東京ディズニーシーにかつてあったアトラクション、ストームライダーをご存知でしょうか?
2016年5月16日のクローズから早いものでもう4年。今日はこのメモリアルな日にちなんで、ストームライダーに潜むレトロフューチャーさについて、1930年代の流線型などのキーワードとともに考えてみました。

ポートディスカバリーとストームライダー

東京ディズニーシーには7つのテーマポートと呼ばれるエリアから構成されており、ポートディスカバリー(以下PD)はその1つです。
PDは時空を超えた未来のマリーナ。気象コントロールセンターの開発したストームライダーの完成を祝うフェスティバルの最中というコンセプトでした。
飛行型気象観測ラボ、ストームライダーのミッションは嵐を消滅させること。搭乗したゲストには安全なフライトが約束されていたはずでしたが……自由すぎるパイロット、デイビスのおかげで事故っちゃいます。やれやれ。

ポートディスカバリーにあったストームライダーのポスター(筆者撮影)

PDには昔の人々が思い描いた未来像が反映されていることでも知られています。『東京ディズニーシー物語』によれば「ポートディスカバリーの建造物は、20世紀初頭の人々が思い描いた未来像をもとにデザインされていますが、さらにヴィクトリア朝の建築様式と、1920年代から30年代の機械化時代のデザインコンセプトも織り込まれている」とのこと。

ストームライダーは上記の中でも特に1920-1930年代の機械化時代の要素と関連があるように思えます。
では具体的にどのようなものが挙げられるのでしょうか?あくまでも個人的な推測ですが、よろしければおやつのピーナッツを片手にお付き合いください。

1.メタリックなボディ

ストームライダーの機体は模型やプレショーを見る限りややマットな銀色ですが、フライト中には日差しを受けてギラリと輝いている姿も確認ができます。この機体の色は未来的でもあり、同時にどこかレトロさも感じます。

ちょうど1930年代は(それ以降も)米国のダグラス社製の航空機に代表されるように銀色のものがしばしば見受けられ、こうしたメタリックな機体は金属むき出しを意味する “bare metal” とも呼ばれています。

century-of-flight Commercial Flight in the 1930s より

当時は塗装をするのに高いコストがかかるのと、機体が重くなってしまうという理由から、このような外観になっていたようです。

1930年代のアメリカの航空会社、トランス・ワールド航空のポスター
Vintage Ad Browser より

2.流線型

流線型は1930年代のアメリカを中心として流行したデザインで、最先端の科学技術のイメージを帯びていました。元来は航空機などの空気抵抗を減らすために考案されましたが、次第に乗り物だけでなく電化製品など、より身近なものにも流線型の要素が取り入れられていきました。

その流行は当時の日本にも及びますが、その最も有名な例として満鉄のあじあ号が挙げられるのではないでしょうか。ところが流線型は本来の意味から外れて一人歩きをしていることもあったようです。
1935年の流行歌『流線型ジヤズ』がまさにそれ。

恋のウインク、腕の筋肉、なんでも流線型って言っとけばモダンに仕上がるだろという感じが愛おしい。さて脱線はこのあたりにしておき、戻りましょう。

ストームライダーのフォルムは実用性というよりはむしろデザインとしての流線型を体現しているような印象を受けます。
というのも、ノーマン・ベル・ゲデス(Norman Bel Geddes)の作品がストームライダーの造形を彷彿とさせるからです。
彼は1920年代から活躍していたアメリカのインダストリアルデザイナーで、流線型を取り入れた作品でも知られています。
ここではベル・ゲデスの代表的な2つの作品をご覧いただきましょう。

・「モーターカー No. 9」(Motorcar No. 9)(1932年頃)

Ransom center magazine From the Outside In: Model of “Motorcar No. 9,” Norman Bel Geddes, ca. 1932 より

ティアドロップ型の自動車で、銀色のボディやころんとしたフォルムがとってもスタイリッシュです。コンパクトそうですが8人乗りの想定でした。

・大型旅客機「エアライナー No. 4」(Airliner No. 4)(1929-1932年)

Airliner Number 4 – Wikipediaより

斬新で大胆な発想!空想科学小説に登場しそうでワクワクしますね。

これらはいずれも実用化には至りませんでしたが、だからこそ当時のロマンがそのまま残っているようにも思えます。

ちなみにベル・ゲデスは『Horizons』という著書を残しており、深読みが過ぎるのは承知ですがPDにあるホライズン・ベイ・レストランを連想せずにはいられません。
PDとストリームライン・モダン建築の関連性についてもいずれじっくり考えてみたいです。

また、Twitter上ではディズニーのイマジニアが1997年に描いたストームライダーのスケッチが紹介されていました。緻密で植物のような曲線の装飾からはアール・ヌーヴォー的な印象も受けます。

アトラクションの雰囲気自体は現代的なので気づきにくいですが、このように機体の造形を通してストームライダーをみてみると、ちょうどストームライダーの完成を祝うPDのように、科学技術の発展を称えた1930年代の要素が根底にあるように思えます。
まさに時空を超えた未来のマリーナですね。

ここまでお読みいただきありがとうございました。Over!

主な参考文献
『東京ディズニーシー物語』講談社、2007年
『東京ディズニーリゾート物語』19号 講談社、2003年
『東京ディズニーリゾート マップガイド』講談社、2001年

乗りものニュース 銀色にピカピカ光る「金属むき出し」飛行機 そのメリットは? 見かけなくなったワケ
artscape アートワード>流線型デザイン
Wikipedia Aircraft livery

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