無計画の散歩のような小説〜初の小説集に寄せて

ゆくどば初の小説集「鳩の彷徨」を入稿いたしました。ありがたいことです。そこで、その小説集を紹介するようなブログを書こうと思い立ちました。しかし、さて何を書こう。そもそも自分にとって「書くこと」とはなんだろうか。思い巡らせながら書いた結果、少なくとも小説集の紹介とは言い難い文章ができあがってしまいました。しかし書いてしまったものはしょうがない、せっかくなので残しておきます。

でーでー、ぽぽー
でーでー、ぽぽー
でーでー、ぽぽー
でーでー、ぽぽー
でー。

わかりやすいこの鳴き声を耳は拾い上げる。
キジバトをこれだけ毎日聞くのは久しぶり、いや今までにあったかどうか。
人の少ない、明るい住宅街。歩いたことのない道を彷徨う。
川沿いの道に出る。餌を漉しとる鴨。意外なほど大きな魚を飲み込む鵜。

電子空間では、断片的な黒い鳥が無数に飛び交っている。
その黒い鳥たちはなんという種類なのか、どのようにさえずるのか、それはなんのためなのか、そもそも鳥なのか。
その影は群れになり、大きな塊はしかしそれぞれが違う方向を向いて、てんでんばらばらに飛んでいる。
群れに見えるのは、見える範囲を埋め尽くしているから。
皆出口を探して苦しそうに飛んでいる。
出口などないのに。

歩いたことのない道からよく知っているバス通りに出る。
脳内の地図がつながるのは楽しい。
電線を走っていくのはリス。このあたりではさほどめずらしくないらしい。

無計画の散歩のような文章。
何かをわかりやすく伝えるのに、もっと適した表現ならいくらでもある。
ダブリンの街を一日中歩くだけで小説になるのなら、
この街を歩いても同じことではないかしら。
筋のある小説、筋のない小説。
起承転結、序破急。
一人称二人称三人称、現在過去未来。
神の視点にはなれないけれど、神社で50円のお賽銭。

AはBである、と断じてしまうのは苦手。
AはBでもCでもないからこそ、AはAという言葉を宛てがわれているのだから。
もちろん決断を求められることはあるし、
決断をしなければすべてから疎まれる。
しかし、少なくとも小説はそこで立ち止まることができる。

ただ、できあがったそれは果たして小説なのか。
とはいえ詩と呼ぶには烏滸がましい。
エッセイというほど整ったものでもない。
小声で、小声で、脳が漏れる。

夜になると川にはガードマンがやってくる。
電灯の近くで腹を満たし、何度も何度も同じところを旋回。
小さな翼をはためかせ、闇に紛れて音もなく飛ぶ。
君は電子空間から迷い込んだのかい?

でーでー、ぽぽー
でーでー、ぽぽー
でーでー、ぽぽー
でーでー、ぽぽー
でー。

そんなこんなで書き溜めた文章、「探鳩文庫 鳩の彷徨」の詳細はこちらからどうぞ。5/18より開催のオンラインイベントText-Revolutions Extraにて頒布いたします。

LINEで送る
Pocket

コメントを残す